するかしないか、それが問題だ
セックスするかしないか、それが問題だ
――アダムとイブの時代から、男と女は……
セックス、SEX、セックス、せっくす、セックス。町にはセックスがあふれている。冒頭から突然だが、一度聞いてみたい。どうしてあなたはそんなにもセックスがしたいのか。
セックスは確かに気持がいい。――こんな言葉を聞いて昨日のセックスを思い出してニヤニヤしているあなた、人前であまりだらしない顔をしないように――いや、セックスに限らず、性的な接触は気持のいいものだ。
セックスをするためには、男と女がくっつかなければならないのだが、この男と女の関係ほど昔からとんでもないものはなかった。これは世界最古の文献の一つである聖書にも、そう書かれている。はじめの人間、アダムとイブの話を思い出してほしい。
彼らが楽園を追放されたのは、イブのせいだったのではないか。イブが蛇にだまされ、「知恵の実」を食べさえしなければ、人は楽園に居続けることができたのである。
悪役はイブだけではない。聖書にはもう一人女性の祖が出てくる。リリスという名の彼女は、アダムという夫がいながら悪魔に身体を売り渡す淫売なのである。そして化け物を産みまくったというから空恐ろしい。頭が痛くなりそうな話だが、原初から、女とかかわるとろくなことがないことがよくわかる。
こんな話は、聖書に限ったわけではない。ギリシャ神話に登場する最初の人間の女、パンドーラーも、伝承を読むとめまいがするほどだ。ちょっと、ギリシャ神話から引用してみよう。
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彼はヘーパイストスに命じ、まず土と水で人形を作らせ、活力と人間の声を与えたうえ、不死の女神に等しい、まばゆいばかりに美しい乙女を作り出させた。神々は、皆それぞれ、この新しい創造物に特別な贈物をした。彼女には、パンドーラーという名が与えられた。ところが、ヘルメースは、彼女の心臓に不実を、口には嘘をそそぎ込んだ。そのうえで、ゼウスは、彼女をエピメーテウスに与えた。兄プロメーテウスは、弟に、オリュムポスの支配者から贈物など絶対にもらってはいけない、と警告したが、軽率なエピメーテウスは、パンドーラの美しさに魅せられ、彼女を迎え入れ、人間の仲間に加えてやった。なんと不幸な軽はずみであったことか。というのは、パンドーラーは大きな壺を抱えていたからであった――この壺を、誤って「パンドーラーの箱」と言っている。彼女がその壺の蓋を開けると、その中に一杯入っていた恐ろしい不幸が逃げ出し地上に拡がった。希望だけがあとに残った。最初の女性が生まれると同時に、また悲惨もこの世に現われたのであった。
(フェリックス・ギラン著・中島健訳『ギリシア神話』青土社)
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もうおわかりのように、女性はその存在のはじめから祝福されたものではないのだ。何しろ、その心臓に不実、そして口には嘘である。さらに、持ち物には恐ろしい不幸が一杯につまっていたのだからたまらない。唯一の救いが「希望」などとは、泣けてくるではないか。男も男で、そんな女にコロッと引っかかっているあたりを見ると、人間とはそんなに賢い生き物ではないのかもしれない。
こんな話をしていると、男尊女卑とか差別とかと糾弾されそうなので、このへんにしておこう。もちろん、私は女性を卑しめるためにわざわざこんな話をしたわけではない。性に対するアンチテーゼを、ホンのちょっと提示したかっただけである。
ところが、ところが、昔からこんな恐ろしい話がるにもかかわらず、男と女がくっついているのである。聖書などでは、こんな話から始まっているのに、どうして産めよ増やせよになってしまうのか? 迷信と一言でくくってしまうかもしれないけれど、古人の知恵というものも、見逃せない。まあ、まったく理解できないというのが現代人である。
まあ、それはいいとして、男と女がくっつけば、必ずセックスの話が持ち上がる。そして、セックスという行為は、あらためていうまでもなく、人類の持つ最大のテーマの一つとなっている。
古今東西、多くの文化が性をテーマとしてきた。いや文化という言葉は当たらないかもしれない。人類の生存の源泉たる行為であるセックスは、人間の存在そのものに直結するからである。
まあ、そんなにむずかしい言葉を使わなくとも、セックスなどは人間にとって、原初から欠くべからざる行為といえる。何しろ、アダムもイブも神から教えてもらったわけでもないのに、いつの間にか子供が産まれているのである。とすると、セックスは「もともとあった」と考えた方が自然だ。
――いやいや、ギリシャ神話などでは、神様がセックスしているのだから、人間がしない方がおかしいともいえる。日本神話でも、イザナギ・イザナミの名前を出すまでもなく、カミが交わる描写がそこかしこに登場する。
神からしてこんな有様なのだから、いわんや人間がセックスしまくるようになるのも無理からぬことともいえる。
さて、本書はこんな「セックス」について、これまたセックスと不可分な愛情などを交えながら科学的に迫っていこうというものだ。
私たちがお手本にしている、トレンディドラマやホームドラマ、そして恋愛小説もミリオンヒットのラブソングも、私たちに現実の恋愛を教えてくれなかった。そんな抽象的なものではなく、もっと科学的に、具体的にセックスの実像に迫ってみたい。
セックスが好きな人も、そうでない人も、あなたのセックスをもっとよくする方法が見つかるかもしれない。
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